面白い土地~運河沿いに住む?働く?

街を歩いていると面白い土地や建物に行き当たることがあります。建物ならば、店舗として使われていたところに車を入れてあるとか、1階の天井が非常に高い元工場で、今はただ住んでいるだけなどというもの。
私たちの事務所がある南麻布2丁目は、かつて古川に沿って町工場が多数存在していたため、そのような物件が今も存在します。そんな建物を見るたびに僕らは「いい素材だな~」と言って、お店やレストラン、アトリエやシェアハウスなどに転用することを妄想して楽しんでいます。趣味として名づけるならば「エア・リノベ」とでも言いましょうか。
でも、近年の都心におけるマンション需要の高まりと共に、そういった面白い物件も減ってきています。大規模な再開発も街を変えますが、既存のコミュニティーがバラバラになってしまいかねません。その点、小さなリノベーションは町のコミュニティーを守りつつ、魅力向上に大きな力を発揮することがあるので、その種を失うようで実に寂しいことと感じています。
事務所近くの白金1丁目にあるマルイチベーグルさんなどは、小さな点が町を魅力的に変えた典型的な例でしょう。出来た当初は近所におしゃれなお店などなかったのですが、その後は美しいケーキを作られているパッション ドゥ ローズ さんやバスク地方のお菓子がおいしいメゾンダーニさんなど、次々と素敵なお店が増えてきています。点から線、線から面へと広範囲に良いフィードバックをもたらすことも多いため、遊んでいる物件があれば積極的なリノベーションを試みたいところです。
さて、今回は建物のリノベーションではなく土地の話。 港区で設計の仕事をするにあたって、六本木・青山のような繁華街でのビルや、南麻布・白金台での住宅・集合住宅など、企画や設計を手がけたい建築は色々と思い浮かびますが、その中のひとつとして是非設計してみたいのが運河沿いの建築です。
私自身はゆらゆらと揺れ動く水面を眺める事が好きですので、川や運河沿いの土地を凄くポジティブに見ているのですが、実際に事務所近くの古川沿岸や、かつて事務所を構えていた中央区八丁堀界隈を見ると、川あるいは運河に背を向けるように建つビルがほとんどです。素晴らしい景観と言うほどではないかもしれませんが、都心の密集した地域において視線が抜ける空間があるだけでも貴重ですし、目を向けて実際に活用することで人々の意識が変わって川や運河をきれいにしようという機運が高まって、だんだんと良くなっていくこともあるでしょう。

運河沿いのオフィス計画案(2009年)
ビル1階のテラスから運河沿いの遊歩道にデッキで降りられる。運河を街に開き、魅力的な場所として再生することを意図した提案。
以前に運河沿いの土地でオフィスビル計画のご相談を頂いた際、
・1,2階をレストランとして、近隣の人が入れる場所として活用する
・運河側の遊歩道と道路側とを結ぶ通り抜けの空間をつくる
・運河に面したテラス席を設け、運河のある街として地域の魅力を高める
・結果として、ビルの魅力も向上して収益性も高まる
というご提案したことがあります。 惜しくもその計画は進みませんでしたが、事業主様と共に1年かけて練り上げた「街に対して貢献することで、建物のオーナーもテナントも街も良くなる」という、近江商人における「三方よし」のようなコンセプトは、今でも非常に有効で、また社会的にもより一層求められてきていると感じています。

運河沿いのオフィス計画案(2009年)
運河を魅力的な地域資源として捉え、1階で道路と運河をつなぐ通り抜け空間を設け、運河を街に開くことで地域に回遊性を持たせる。
そんなことを考えつつ、どこか面白い土地はないものだろうかと、常日頃アンテナを巡らせているのですが、現在芝浦4丁目に運河に面した土地が売りに出ているのです。去年からさまざまな不動産情報サイトに出ている物件なので、港区で土地をお探しの方はご存知かもしれません。
巨大なビルを建てられるような広さではなく、公簿で46.27m2(約13.99坪)という、ようやく一戸建てが建つ程度の控えめな広さの土地です。運河に面しているだけでも最高なのですが、運河の交差点のような場所なので、向こう200mくらいの水面を望める最高の立地。しかもその運河上には、東京モノレールの軌道が通っているため、水面の上をモノレールが走るという非常に都市的な景観も楽しめます。
難点は最寄の田町駅から徒歩14分と少々距離があることですが、2020年には田町駅と品川駅の間に山手線の新駅が開設される予定であり、そうなると新駅から徒歩7,8分程度の好立地に変わります。
南東側に運河がありますので、港区でありながら日当たりは極めて良好です。 一戸建ての住宅なら、3階建てで1階に水周りやクローゼット、2階に寝室、3階にLDKといった構成が考えられそうです。
店舗や事務所単体、または併用住宅ならば、4階建てでもよいでしょう。 運河とモノレールを眺めるバーなんて人気がでそうではありませんか。
共同住宅ならば、エレベーターなしの5階建てとしてレンタブル比を高めつつイニシャルコストを抑え、4,5階をメゾネットとして物件の特徴を際立たせることで、都心に住みたい人の気持ちをくすぐることが出来そうです。
上記用途を投資用として考えるならば、当面は自己使用か賃貸物件として運用し、新駅開通後の2020年に売却するのも妙案です。あるいは2027年に品川駅から名古屋駅間で運行が予定されているリニアモーターカーの開通まで待てば、より物件価格が上昇しているかもしれません。
この土地のポイントをまとめると、
・運河に面した土地で、目の前に静かな水面が奥行きにして200m程度拡がる。
・運河上を走るモノレールも視界に入る都市的な景観。
・敷地南東側が運河であるため、非常に日当りが良い。
・2020年の山手線新駅からは徒歩7,8分程度の立地になる。
・山手線新駅から芝浦アイランドに至るルート上である。
・準工業地域であるが、現時点でもオフィスビルが多数存在する。
といったところです。
環境が希有な土地ですので、投資対象としても差別化が図りやすいですし、自己使用としてもハマる人にはハマる面白い土地と感じます。 もし、ここで何か実現したいことのイメージがおありの方がいらっしゃいましたら、計画案の作成を致しますのでお声掛けください。

芝浦4丁目で売り出し中の土地
都心にもかかわらず、静かな水面を見ながら過ごす生活が実現できる。