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失敗しない!土地探しのコツとポイント-18


地下水が高い土地

地震に強い土地の選び方-12

・地下水位が高い地盤の例

「失敗しない!土地探しのコツとポイント-17 地震に強い土地の選び方-11」に続き、実際の地盤の写真と近隣の参考地盤調査資料を見比べてみましょう。

上の写真をご覧ください。これは都内某所の基礎工事の様子です。

地盤面から2m近く掘り下げられています。そして底には水が溜まっていますね。当日や前日に大雨が降っていたわけではありませんので、これは湧水と思われます。もし、地下室や半地下のスペースを作るのであれば、何らかの防水を施したり二重壁を設けるなどの対策が必要です。

土の色は、濡れていることもあってかなり濃いこげ茶色。ややグレーっぽい部分も見受けられますので、黒ボクと粘土の層の境目くらいのようです。

・写真と地盤調査資料を見比べてみる

では次に、この土地からそれほど離れていない場所の地盤調査資料を見てみましょう。

本記事中の参考地盤資料は、いずれも東京都建設局が運営するサイト「東京の地盤」から得られるものです。(緯度経度など資料の一部を消してあります)

参考地盤調査資料1

地表面から-1.2mまでが表土、そこから-2.5mまでが火山灰質粘土、その下には砂質粘土、シルト、高有機質粘土と続きます。

前回ご覧頂いた写真の関東ローム層が出た土地とは色も地盤の構成も違いますね。でも実は、ロームも火山灰などが降下して積もってできた土ですので、親戚のようなものです。湿地などに火山灰などが降り積もった場合にはグレー色になり、赤褐色のロームに比べるとやや柔らかめの地盤になると考えられています。

図右上に「孔内水位:GL-2.20m」と記載があります。孔とはボーリング調査にてあけた孔のことで、その中に水がどの程度の位置で観測されたかを示すものです。GLはGround Levelの略ですので、地盤面から2.2mのところで水が出るということ。ただし、調査時に水を使用することが多いため、厳密な地下水位とは異なりますが、地下の計画をする際に有効な資料になります。

・周辺の地盤調査資料も見てみる

その他の近隣データはどうでしょうか?

下図左をご覧ください。左上に「孔口標高:T.P.+13.00m」とあります。T.P.とはTokyo Peilの略で東京湾平均海面の高さを示しておりますので、この調査地点はそこから13mの高さにあることがわかります。写真の土地の孔口標高はT.P.+12.00mですので、ほぼ同じ標高の土地の資料です。

この土地では地表面から-2.45mまでが表土、そこから-5.25mまでが腐植物混じり粘土、その下にはシルト、粘土質細砂と続きます。

孔内水位はGL-1.25mですから、比較的浅いところで水が出る土地です。腐植物混じり粘土がありますので、遠い昔は葦などが生える湿地帯のような場所だったことがうかがい知れます。

参考地盤調査資料2,3

上図右をご覧ください。左上に「孔口標高:T.P.+21.69m」とあります。写真の土地からの距離は、左図の土地とあまり変わりませんが、標高が10mほど高い場所のデータです。

高台であるだけに、地盤面からすぐの-0.8mからロームが出ています。その下は薄い粘土層とシルト質砂層を挟んで粗砂が出る安定した地盤です。

孔内水位が-0.80mと高めですが、これは調査時の水が抜け切らなかったのではないでしょうか。

・この地域はどんな場所?

あまり距離が離れていないところでも、地盤の構成が大きく変わるこの地域。いったいどんな地域なのでしょうか?国土地理院の「電子国土Web」で「治水地形分類図」を見ると、地形の分布がよくわかります。

https://maps.gsi.go.jp/

上記リンク先を開くと日本列島全域の地図が表示されると思います。

左上の「情報」をクリックし、次の順序で操作してください。

→「情報リスト」が出てくる。

→「土地の特徴を示した地図」をクリック

→「治水地形分類図」をクリック

→「更新版(2007~2016年)」をクリック

日本列島全域の地図に紫色の点が付加されましたか?その範囲内であれば、扇状地、旧河道、後背湿地などの詳細な地形の分類などが記された「治水地形分類図」を見ることができます。(下画像出典:国土地理院の「電子国土Web」)

最上部の写真の場所を「治水地形分類図」でクローズアップして見てみると、薄いグリーンのエリアにありました。

画面左下に「選択中の情報」と書かれた画面は出ましたでしょうか?そこにある「解説」をクリックして開いた画面の「凡例を表示」をさらにクリックすると、凡例が別画面で開きます。

それを見ると、薄いグリーンのエリアは「大分類:低地、中分類:氾濫平野」とのこと。「氾濫平野」とは、「洪水時に川の水があふれる範囲にある平野部分(国土地理院ウェブサイトの解説より)」を指します。

上図右の土地は、薄いオレンジと濃いオレンジの境目あたりにあります。凡例によれば「大分類:山地」と「大分類:台地・段丘、小分類:段丘面」に相当する土地です。

さらに周囲に目をやると、近くにはグリーンの「後背湿地」があり、さらにその地域を示す名称には「池」の字が含まれていますので、昔から湿った低地だったことがわかります。 このエリアは山あり谷ありの地形であるため、同じ町内でも色々な地盤があるところなのです。

・湿った土地は地盤が弱い?

表層部分が湿った土地の場合は、やや緩めであることが多いのは事実です。でも、実際にそのような土地はたくさんあり、住宅はおろか高層の鉄筋コンクリート造の重いビルも建っています。住宅や低層のビルならば、地盤改良と呼ばれる軟弱地盤を補強する杭に比べると安価な方法を用い、中層以上のビルならば良好な地盤に届く杭を打って建物を支えるなど、適切な設計と施工をすればまったく問題ありません。その検討の材料となる資料の一部が、上で参考事例としてごらん頂いた地盤調査資料の右半分「標準貫入試験」の欄に含まれています。

その「標準貫入試験」に関わるお話はまた別な機会にするとして、今回で一旦「失敗しない!土地探しのコツとポイント」シリーズを終わります。 住宅やオフィスビルなどを建築するための土地探しは、お望みの建物を建てるために非常に重要なステップです。ご相談は随時受け付けておりますので、メールやお電話などでお気軽にお問い合わせください。

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