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南大井の集合住宅

用途
竣工
所在地
​構造設計

施工

共同住宅
2022年3月
東京都品川区
下久保亘/オンスタジオ
構造設計事務所
大三工事株式会社

汎用性のある現代の長屋として

社会人の単身または二人住まいを想定した投資用1棟マンションです。

敷地の近くには大森貝塚があり、明治10年にモースが横浜から新橋に向かう汽車の車窓から武蔵野台地の端部である崖面に覗く貝層を見出したことが発見に繋がったとのこと。現在の東京湾からは3kmほど内陸にあるために実感はしにくいものの、このエリアがかつては陸と海との境目にあったことを裏づけるエピソードとして想像をかき立てられます。敷地の東側には、古い商家や寺社建築に街道や漁村の風情を色濃く残す旧東海道もあり、この場所が太古の昔から生活の糧となる豊かな自然の産物が採れ、日本各地の物や人が行き交う動脈であった、住んでよし働いてよしの土地と言えるでしょう。

現在でもその傾向は変わらないようで、行政の資料によると大井エリアでの昼夜間人口比は1.2程度であり、同じ品川区内の大崎エリア3.0とは大きく異なることが伺えます。大企業も近辺にはあるためか、やや昼間の人口流入が多いものの比較的職住近接が実現されている街です。

本計画の企画に着手した時は、折りしも新型コロナウイルス禍の真っ只中で、リモートワークという新しい働き方が広まりつつある大きな社会的変革期にありました。また、大規模な金融緩和を背景とした不動産投資が活発になり、多くの投資用不動産、特に平成バブル期に建設された狭小ワンルームマンションの再来という物件が過剰なまでに増えていた時期でもあります。本計画では、それら物件との価格競争を懸念する考えから机上の利回りを追いすぎず、27㎡強という投資用マンションとしては少し広めな貸室に、生活空間と仕切られた寝室を確保することでリモートワーク用途も内包できる少しばかりの空間的な余裕と汎用性を持たせ、単身から二人+未就学児1人程度までの生活が可能な、いわば現代の長屋となることを目指しました。

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