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NESTo KAMATA
 ~特区民泊仕様の共同住宅

用途    特区民泊(共同住宅)


竣工    2025年4月
所在地   東京都大田区
​構造設計  下久保亘

      /オンスタジオ構造設計事務所
​設備設計  山本健朗,中田優里菜

      /山崎設備​設計
施工    大三工事株式会社

日常と非日常の境界

 

京浜急行蒲田駅界隈に建つ特区民泊仕様の共同住宅である。

都内唯一の国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業いわゆる「特区民泊」が認められる大田区。なかでも羽田空港からのアクセスに優れた蒲田界隈は、近年のインバウンド需要の受け皿として活況を呈している。

その中心部にある京浜急行線・JR京浜東北線・呑川・環八通りに囲われた地域は、エリア中央部を東西方向に通る区道をX軸に、南北方向に通る東邦医大通りをY軸として次のように大別される。

・第一象限:京急蒲田駅側北部:飲食店の中に神社や共同住宅もある商業系住居系エリア

・第二象限:JR蒲田駅側北部:銀行や飲食店が立ち並ぶ業務系商業系エリア

・第三象限:JR蒲田駅側南部:飲食店の他に公共施設や塾が目立つ業務系文教系エリア

・第四象限:京急蒲田駅側南部:仲蒲田公園を中心とする閑静な住居系エリア
本計画は、商業系エリアの性格が強い第一象限に近い第四象限の北側に位置し、非日常のざわめきと日常生活の静けさの入り混じる都市的環境にある。

周囲は東京のターミナル駅周辺が持つ雑多な雰囲気を宿した典型的風景であるが、旅行者にとって多様なグルメを楽しめる繁華街の賑わいが、既存住民にとっては観光公害とも受け止められかねない場所とも言える。そのためにファサードのデザインは、宿泊施設としてのゲストから見た視認性と、近隣住宅に配慮した品性とのバランスの見極めが設計のキーポイントとなった。

 

1~4階まではワンフロア1戸のフラットとし、2,3,4階は壁一面の二段ベッドを備えることでスペースを効率よく使うと共に非日常感を高めている。対面の戸建て住宅との視線の交錯を避けるよう、道路に正対する開口部はバルコニー部の掃き出し窓のみとし、大型TVを据え付ける道路側中央部の壁の両端にスリット状の開口部を設けることで採光と通風を確保しつつ、空間の奥行を深めている。

5,6階は大型のメゾネットとした。直通階段を1本とするための策でもあるが、エリア内の宿泊施設には無い広く開放的なリビングを確保することにより、オンリーワンの存在となることを目指した。

 

道路側の南北の壁は、道路斜線制限の緩和を得るために道路境界から2m近くセットバックさせた。それにより室内からの視線の抜けと必要十分な採光ならびに空気の流れを確保しつつ、相対する住宅との距離を心理学上の「Public Distance(公共距離)」の遠方相に相当する7.6m以上を確保することで、既存住宅のパーソナルスペースを尊重した。ファサード両端をセットバックさせたことで生じた少しばかりの余白は、隙間なく埋め尽くされる街並みを分割して視線の動きに変化を与えている。

道路側中央の壁面仕上は、視認性を高めつつも天空率計算への影響を抑えるために、厚みを持つ素材で覆うことなくコンクリートそのものの存在感を引き出す操作として「洗い出し」を採用した。従来、人の手によりコツコツとハツることで得られたビシャンや小タタキといった陰影のある風合いを、手作業ではなく特殊型枠を用いて実現する合理的な工法である。

タイルや金属パネル等の均質なテクスチャーではなく、また鏡面のように光沢を帯びる綺麗なコンクリート打放とも異なるラフでありながらも繊細な表情を持つ壁は、水墨画あるいはパエジナストーンのような幻想性と少しばかりの野性味を帯び、非日常を過ごす宿泊施設と日常を生きる街往く人との境界をなしている。

Copyright © 2025 Jun Shimomura Architects 

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